五條悟と時渡るJK〜過去いま運命論〜(dream)
□12-保護と五条悟
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「渋谷、超、満喫できたー!!」
夕方の公園のベンチでご機嫌でそう言った少女を横目で眺める五条。
「付き合ってくれて、ありがとーね! ごじょーさとる」
「別に、監視のついでだよ」
笑顔でお礼を言ってくるアミに素っ気なく返す五条。
――こいつ、案外“マトモ”だな…
アミと行動を共にして分かったが、アミの性格や思考は比較的一般人の部類に入る。
呪術師はネジの外れている者も多いが、五条から見ればアミはネジを“外したい”人間に見えた。
術式は完全には解明できてはいないが、恐らく能力的には“術式の無効化”あたりが妥当だろうか。
――能力だけみれば一番やっかいだな…。
プリクラを撮る際に抱き付かれた時にはさすがの五条も焦った。
常日頃から賞金首に命を狙われている五条である。
無下限呪術を発動していれば物理も呪術も当たる事はないが、アミに触れられれば術式は強制解除だ。
一瞬の隙が命取りとなる。
――まあ、俺の方が強ぇ事に変わりねーけど
アミの能力の特性や発動条件は身をもって体感している。
今後、アミと戦闘になったとしても五条に軍配があがるであろう事実は揺るがなかった。
※
再びアミが逃亡を図ろうとしたため、五条が強引に引き留める。
「だったら、呪物をおいてけよ。それなら許してやる」
提案した内容は五条なりに最大限譲歩した結果だった。
五条から見てアミは、およそ非術師に危害を加えるような人物には見えず、むしろ利用されている側の人間だ。
術式が特殊ではあるものの、アミを拘束して無力化すること自体は容易である。
そのためアミ自身を放っておいても、そこまで問題にはならないだろう。
しかし、特級呪物については話が別だ。
今は何故か封印されているのと同じ状態ではあるが、いつその状態が変化するか分からない。
アミにとって故意でも過失でも、呪術テロが起きてしまう危険があるのだ。
夜我からも“呪いの王”の呪物回収の重要性については、十分言い聞かされている。
「これはアミの生命線だから、無理だってば!」
なおも五条の提案を固辞するアミ。
お互いに一歩も譲らない話し合いは、最終的に五条の力の一端を見せる形で幕を閉じた。
※
「分かった。アミの負け」
手を挙げて降参の姿勢を見せる少女。
「ごじょーさとるの言うこと聞くよ。保護されてあげる」
「……本当かよ?」
いきなり謙虚な姿勢となったアミに、俄かには信じられないと五条は眉間に皺を寄せる。
「あ! 信じてないでしょ。アミにだって事情があるんだからね!」
腕を組んでプイッとソッポを向くアミ。
数秒むくれた顔をした後、少しだけ思案顔をする。
「……ごじょーさとるが良いヤツだってのは、アミ分かるよ」
不意に呟かれた言葉に五条は呆気にとられてしまう。
すると、組んだ腕を解いてアミは笑顔を向けてきた。
「ねえ、一個お願いしてもいい?」
「……なに?」
「アミ、もう一つ思い出作りたい!」
「思い出?」
「うん。もう一回アミと一緒にプリクラとってよ!」
「はぁ? なんでだよ」
訝しむ五条に対して、アミは声のトーンを下げた。
「アミはごじょーさとるは信用してるけどさ、ごじょーさとるの背後にいるかもしれない人たちは信用してないんだよね。特に大人たち」
「……アミを保護する奴らは、とりあえず信用できる奴等だと思うぜ」
「どーだろうね。大人って平気で嘘つくじゃん。ごじょーさとるも騙されてるかもしんないよ?」
「騙されてなんかねーよ」
「アハハ! そーかもね。まあ、でも、分かんないじゃん。アミは。そっちに行ってみないとさ」
「……」
アミの言葉に五条が咄嗟に反論できなかったのは、アミの能力を思い出したからだ。
現在いる呪術師の中に“術式の無効化”を持つ者はいない。
もしも呪術協会の上層部がアミの能力に目をつけた場合、五条の想像の範疇を超えてアミを利用しようとする可能性はあるだろう。
「……アミ。約束してやるよ。お前が利用されないように俺がちゃんと言ってやる」
呪術界の御三家の嫡男にして、数百年ぶりに“無下限呪術”と“六眼”を持って生まれた天才、五条悟。
まだ齢9歳とはいえ、自分の発言力がそれなりにある事は本人も自覚していた。
「ありがとう。ごじょーさとる。そう言ってくれてアミ嬉しい!」
五条の言葉に喜んで破顔するアミ。
「アミね、ごじょーさとるのこと信用することにしたから、保護されてあげる。……でもね、さっきも言ったけど、やっぱり大人は信用できないの」
少しだけ悲しげに瞳を伏せたアミ。
初めて見せたその表情に五条は彼女のいる環境の闇を垣間見た気がした。
「だけどね、思い出があれば、アミ我慢できるタイプなんだ」
先ほどの悲しさから一転し、得意そうな笑みを作ったアミは両手を合わせた。
「だからお願い。アミの勇気になるからさ、もう一回だけプリクラとってよ」
ねッ! と、ニッコリと笑う少女の願いを、五条は断る事が出来なかった。
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